こんにちは、久保です。

皆さんは「トレーニングの記録が伸びているのに、パフォーマンスが上がらない」という経験をしたことはありませんか?また、それを見たコーチも「ウエイトだけ強くなりやがって、、、やっぱウエイトは無駄だ!」みたいなこと言ったりしているの、聞いたことありませんか?

今回はその一因を担っているであろう、トレーニングのVector specific(発音:ヴェクター↑スペ↑シフィック↑)というものを説明させていただきます。

 

Vector specificってなんぞ

適当な日本語訳が見つからなかったので英語で書きましたが、日本語に直すと「方向特異性」となるでしょうか。

「特異性」という単語で辞書(スーパー大辞林)を引くと『酵素が特定の限られた種類の基質反応に対してしか触媒作用を示さないこと。』と出てきますが、トレーニングにもそのような「トレーニングがなされた動作が顕著に向上する」というものがあります。いわゆる「特異性の原理」ってやつです。そこに「方向」が加わるので、つまりは「トレーニングがなされた方向の動作が顕著に向上する」ということになるでしょうか。

次に、このVector specificをわかりやすく説明します。例えばデッドリフトのようなエクササイズは垂直方向へ力発揮をするので、ジャンプ高との関連が指摘されていたり(Robbins et al., 2011)、いわゆるオリンピックリフティング種目も同様にジャンプ高との関連が指摘されています(Hackett et al., 2016)。

ですが、例えば向上させたい、力を入れたい種目がスプリント(水平方向の動作)だとしても、垂直の力発揮に特異的な種目ばかりやっていると、これはスプリントにとって特異的でないことになるので、スプリントの向上はあまり起こらないことが考えられます。これがいわゆる「トレーニングの記録が伸びているのに、パフォーマンスが上がらない」状態であることが予想つきます。

さらに、熟練者は、トレーニングの記録の伸びが競技パフォーマンスに直結しづらい、ということも指摘されています(Barr et al., 2014)。

どのような種目がどの方向へ特異的なのか

では一体、どのような種目がどの方向へ特異的な種目なのでしょうか。以下に図を示します。

赤字が垂直方向へのエクササイズ、青文字が水平方向へのエクササイズの例です(Zweifel. 2017)。

Contreras et al.(2016)は、ヒップスラストが他の種目よりも短距離走(10-20yds)の記録を向上させることを報告してるように、向上する能力はトレーニングの方向へ依存することがわかりますね。これはおそらく水平方向のエクササイズによって、今までVerticallyだった力発揮がHorizontallyになったためであると、勝手に僕は解釈しています。

ちなみに、ケトルベルスイング(KB Swing)は、スクワットやクリーンよりも軽量で大きな力発揮をすることが報告されています(Otto et al., 2012)。

つまり、どういうこと?

つまり「トレーニングの記録が伸びているのに、パフォーマンスが上がらない」というのは「トレーニングでつけた筋力が、何らかの影響でパフォーマンスに転移していない」という状態を指しているのだと思います。

その要因は1つだけではなく、いろいろなものが絡まっている(練習不足とか)と思いますが、今回はその一つである「Vector Specific」をご紹介させていただきました。

ウエイトトレーニングをして健康的なカラダを手に入れた次は、それをパフォーマンスへ転換させる作業をしましょう。例えるなら、手間暇かけて栽培したおいしい野菜を、自分の力でおいしい料理にしてあげましょう。

このようなことを理解している競技コーチ(トレーニングしても無駄だ!なんて言わない)がいれば、お互いうまく連携し合って、選手にベストな練習をさせてあげられるんだろうなぁ。なんて考えてしまいます。

追記

誤解を招かないように追記しておきますが「早く走るためにはスクワットをやっても意味がない」と言っているわけではなく、「スクワット等の種目でつけた筋力、パワーをうまく競技へ転換するのが大事、その例としてヒップスラストなどが研究で行われている」ということを言いたい、そんな記事です。