今回はベンチプレスのフォームについて解説していきたいと思います。ベンチプレスでは地面/台との接地面が大きく、安定した姿勢から強い力を発揮することができます。高重量が扱え、とても多くの筋肉を動員できる種目です。

 

ベンチプレスで主に動員される筋肉は大胸筋、上腕三頭筋、三角筋前部となります。また、その他にも広背筋、三角筋後部、上腕二頭筋など多くの細かい筋肉が動作をコントロールするために使われます。下半身からの出力も重要となります。

 

簡単に見えるかもしれませんが、ベンチプレスで肩や腰を痛める人はとても多いです。また、バーを胸に落下させたことによる死亡事故なども起きています。まずは基本のやり方、フォームをしっかり身につけてください。


出典「目で見る筋力トレーニングの解剖学」 フレデリック・ドラヴィエ著 2002年 大修館書店発行
ベンチプレスで動員される主な筋肉

説明しやすいよう、ベンチプレスの動作を以下の3つのステップに分けて考えます。ここからそれぞれのステップについて説明していきます。

ベンチプレスの3つのステップ

①安定したスタートポジションをとる

②バーを下ろす

③バーを上げる

 

①安定したスタートポジションをとる

ベンチプレスに限らず、フリーウエイトの種目はスタートポジジョンのとり方が非常に重要です。軸を意識し、安定して出力できるフォームを身につけましょう。

まず、鼻~口の辺りがバーの真下にくるように仰向けになります。

手幅はバーを胸まで下ろしたときに前腕が地面と垂直になるくらいが基本です。標準体型の人なら 81cmラインに薬~小指を合わせるくらいでよいでしょう。それより狭ければ上腕三頭筋、広ければ三角筋前部への刺激が高まります。


バーと肩甲骨の間に肘を入れるようにしてバーを持ち上げ、肩の真上まで持ってきます

脚で踏ん張ってお尻を持ち上げ、胸を張った状態をつくります。このとき、肩甲骨上部~首の付け根を台に押し付けるようにして胸を高く持ち上げる(胸椎を立てる)ようにするとよいでしょう。

ベンチプレスでは肩甲骨が土台となるので、肩甲骨の位置がズレてしまうとバーの軌道もズレてしまいます。肩甲骨の位置がズレないように肩甲骨を寄せた状態で押さえつけておく必要があります※1

”肩甲骨を寄せる”ことは土台を固めるためにも大胸筋をしっかり使えるようにするためにも重要になります。

ただし、背中の力を使って無理に寄せる必要はありません。肩甲骨を下制させ、肘を伸ばしたまま肩を軽く後方に引いてやればバーの重みで勝手に肩甲骨を寄せた状態がつくれます。

※1 肩甲骨を寄せるとは?
肩甲骨を寄せる、といってもただ内側に寄せればよいというわけではありません。下の左図のように内側に寄せるだけ(内転のみ)だと肩や肘が上がってしまいやすいです。右図のように、斜め内側に寄せた状態(下制&内転&下方回旋)をつくれるようにしましょう。

また、寄せれば寄せるほど良いというわけでもありません。寄せすぎると肩甲骨周りの自然な動きが妨げられてしまったり、ベンチ台との接地面が小さくなって不安定になってしまいます。自分で試しながらやりやすい位置を探してみてください。

  

肩甲骨とお尻を近づけるようにしてお尻を台につけ、足は踏ん張りやすい位置に置いておきます。バーの重さは肩甲骨上部から首の付け根辺りで受けられるようにします。

腰椎を反らしすぎると挙上時に脚からの力が上半身まで伝わらなかったり、腰椎が圧迫されて腰を痛める危険性があります。ベンチプレスで腰を反って痛める人は結構多いので気をつけてください。背中のアーチを保ったまま軽く腹圧をかけておきましょう(お腹を殴られた時に腹を固めるイメージ)※2

ここまでがスタートポジションの説明になります。
無駄な力みがなく、安定して力が出しやすいスタートポジションをとれるようにすることはとても重要です。ここまでのポジショニングでベンチプレスのかなりの部分が決まってきてしまいます。

↑スタートポジションのイメージ図

※2 ブリッジ(アーチ)を組むとは?
“肩甲骨を寄せて胸を張り、しっかり脚で踏ん張れている状態”のことを“ブリッジ(アーチ)を組む”と言います。この状態が作れると広背筋の収縮により肩甲骨周りが安定して支点が定まります。胸の力をより強く発揮できますし、下半身からの力もバーまで伝わりやすくなるでしょう。慣れてくればブリッジを組まずとも意識できるようになってきますが、初めは適度なブリッジを組めるようにしていきましょう(腰に不安がある場合は無理に組む必要はありません)

出典「Starting Strength」 Mark Rippetoe著 2013  The Aasgaard Company発行
しっかりとブリッジが組めた状態。広背筋の収縮によって肩甲骨が固定されていることがわかる

 

②バーを下げる

さて、いよいよここから挙上の動作にはいっていきます。

息を大きく吸って上体を固め、バーを剣状突起(鳩尾よりバー1~2本分上のところ)の辺りに下ろしていきます。このとき、バーは初めの位置からややお腹の方に下りていくことになります。頭側に下ろしすぎると、肩や肘が上がってしまったり、肩や上腕二頭筋の起始付近を痛める危険性があるので気をつけましょう。

下ろすときは骨でしっかり重さを受けながらコントロールします。このとき、前腕部は回内位で重さは構造的に橈骨側で受けることになるので、肘の中心位置はバーの真下より僅かに腹側になります(下図参照)。

↑バーを下ろす時のイメージ図

出典「エッセンシャルキネシオロジー」Paul Jackson Mansfield、Donald A. Neumann著 2015 エルゼビア・ジャパン株式会社発行
前腕部回内時の橈骨、尺骨の位置関係

③バーを上げる

脚で地面を強く踏み込み、バーを思いきり握りこんで爆発的に挙上します。上げる方向としては元のポジションに戻すような角度で上げていくことになります。この時、肩甲骨を台に強く押し付けるようにすると力が伝わりやすいです。

ベンチプレスでは後頭部、肩甲骨、お尻、足の裏が台/地面と接地していますが、後頭部とお尻は半分浮いた状態であり、強く接しているのは肩甲骨と足裏になります。この2ヶ所で強く押し込んで大きな反発力を生み出しましょう。

↑バーを上げる時のイメージ図