人は約60兆個~100兆個の細胞を持っていると言われています。細胞の種類は二百数十個。この100兆個の細胞は、それぞれ80億個のタンパク質を持っていると言われています。

100兆個の細胞がそれぞれ80億個のタンパク質…想像もできないような、とてつもない数ですよね。そして前回も言った通りこの80億個のタンパク質は常に分解と生成を繰り返しています。しかも物凄いスピードで。

このサイクルが生命の営みであるわけです。
そしてこれらカラダの中で起こっている化学反応はすべて「酵素」というタンパク質を触媒にして行われています。

このように細胞の中でタンパク質という分子の塊が生命活動にとって最も重要な役割を担っています。

このサイクルを正常に行わせるためにも、たんぱく質の補給は怠ってはいけないというのはよくわかると思います。

ただ「たんぱく質、たんぱく質」と言うとタンパク質がすごく単純なものに思われがちに。

簡単に言ってもその構造であったり、消化・吸収、生体内での働きはとても複雑です。

まず、タンパク質の基本構造についていきましょう。

タンパク質というのはアミノ酸という「分子」が連なってできています。(物質の基本的な構成単位は「原子」。その原子が集まって機能を持ったのが「分子」。)

アミノ酸という分子の原子は決まっていて、窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)、硫黄(S)、水素(H)の5種類に限定されています。

この原子が連なってアミノ酸という分子を構成します。

タンパク質を構成する「アミノ酸」は20種類あり、この20種類のアミノ酸がどういう順番で、どれだけの数つながるかでタンパク質の性質を決めています。

それぞれのアミノ酸はアミノ基(−NH₂)とカルボキシル基(−COOH)を含んでいて、その間にある「側鎖」という分子がアミノ酸の種類を決めています。

たとえばグリシンというアミノ酸は側鎖が「H」、アラニンというアミノ酸は「CH₃」というようになっています。つまり、タンパク質を構成している20種類のアミノ酸は共通の基本構造とそれぞれが違う側鎖を持っているということです。

このアミノ酸が一列に配列されたものを「アミノ酸配列」と言ってこれをタンパク質の「一次構造」と言います(ポリペプチド鎖)。

そう。先ほども言いましたがこの一次構造でのアミノ酸の配列がタンパク質の性質を決めるわけです。

タンパク質はこの直線的な一次構造から、折りたたまれ立体的にならないと活動できません。

そこでまず、アミノ酸とアミノ酸が結合した「ペプチド結合」の中にある、プラスの電気を帯びている「H」とマイナスの電気を帯びている「O」がお互いに引き寄せあい結合する「水素結合」をし、αへリックスやβシートと言われる「二次構造」つくります。

この二次構造のアミノ酸の側鎖同士が電気的な引力で引き合う「イオン結合」、イオウ原子同士の強力な結合「ジルスフィド結合」などをして、アミノ酸と結合し複雑に折りたたまれる「三次構造」。

サブユニットと言われる三次構造がいくつか集まりタンパク質としての役割を果たす「四次構造」。

と、これら複雑な過程を経て立体的になってやっとタンパク質として機能出来るわけです。

そしてこの間には「分子シャペロン」などのタンパク質がかかわってきます。気の遠くなるような作業です。

なにを隠そうDNA(デオキシリボ核酸)、遺伝子が持っている情報はアミノ酸配列の暗号、つまりはタンパク質の設計図です。(遺伝子はDNAの一部です。)

DNAを一本に巻き取り、そこにRNAポリメラーゼが結合、アンチセンス鎖からmRNAを合成、そこにあるコドンをアンチコドン持つtRNAが読み取り、アミノ酸を配列して…

みたいな難しいことが起こってアミノ酸配列が決まっていきます。これをDNAの「転写」と「翻訳」というのですが、この辺もだいぶ長くなるのでまたの機会に。

ここまでなんだかとっても難しい話をしてきましたが、なぜこのような話をしてきたかというと、「生体内で必要なタンパク質は体内でアミノ酸から構成されているということ」を知ってもらいたかったからです。

口から入ったたんぱく質は消化管で消化され小腸で吸収されます。

先ほども述べた通りタンパク質はアミノ酸がいくつもくっついて折りたたまれた多きな分子です。

小腸はこの大きな分子をそのまま吸収することはできません。分子が大きすぎるんです。

ようはアミノ酸レベルにまで分解されないと、カラダには吸収されないということ。

牛を食べても牛にならなかったり、鶏を食べても鶏にならないのは、このように消化の時点でタンパク質としての記憶はすべて分解されアミノ酸になっているから。

なので、コラーゲンを食べてもコラーゲンにはならないと言うこと…

だって、コラーゲンというタンパク質の記憶は消化・吸収されるときにはアミノ酸に分解されて無くなっていますから。

ただコラーゲン分解され吸収されるときに摂れる、プロリンとヒドロキシプロリンのジペプチドには体内でのコラーゲン生成を高める働きがあるようです。なのでそういう狙いでコラーゲンをサプリメントからとるのはありかもですね。

あと前回も言った通り「酵素」も高分子のタンパク質です。

ということはもちろんアミノ酸まで分解されないと吸収されません。なので、酵素を摂っても代謝を上げるなど、酵素としての働きは得られません。(消化酵素は別ですが消化酵素とっても消化能力が上がるだけで決してダイエット効果はありませんので。)
信田

 

参考

たんぱく質入門 武村雅春著(講談社)

たんぱく質の一生 永田和宏著(岩波新書)

エピゲノムと生命 太田邦史著(講談社)

酵素反応のしくみ 藤本大三郎著(講談社)

HSPと分子シャペロン 水島徹著(講談社)

細胞の中の分子生物学 森和俊著(講談社)

遺伝子の基礎からわかる分子栄養学(羊土社)

分子生物学 講義中継 井出利憲著(羊土社)