皆さんこんにちは、久保です。

突然ですが “腕立て伏せ” に皆さんはどのようなイメージを持っていますか?「初心者がやる種目なんじゃ?」「そんなの楽勝だよ」みたいに、わりと腕立て伏せを軽視してしまっているアスリートの方も多いのではないでしょうか。ですが、実は腕立て伏せはちょっと奥が深い(?)種目だったりします。では、どうして僕が「腕立て伏せは深い」なんてことをいうのか、その理由とともに説明いたします。

肩甲骨が動く

腕立て伏せと並んで語られることの多いベンチプレスは、力発揮を最大限にするために肩甲骨を寄せて(内転)下制させる、いわゆる「ショルダーパッキング」を行うと思います。この時、動作を通して肩甲骨を寄せたままなので、肩甲骨は動きません。ベンチプレスを行っている時に肩甲骨を動かしでもすれば「動かすな!」なんて怒られてしまうかもしれませんね。

ですが、腕立て伏せの場合は動作を通して肩甲骨が自由に動くので、そこに付着する「前鋸筋」という筋肉の活動が増すことが広く知られています。この前鋸筋という筋肉は肩甲骨の安定性を担う重要な筋であり、この筋群がうまく働かないと「翼状肩甲骨」が起こってしまうことも知られています。ですので、肩甲骨周辺筋群を頻繁に使うアスリートにとって、腕立て伏せは傷害を予防するエクササイズの一つとして考えることが出来そうですね。

バリエーションが様々

脚・腕を置く位置(広さ編)

腕立て伏せは腕を置く位置や脚の位置によって負荷を調節することができることができます。参考に、以下に図を示します。

これはGouvaliら(2005)の図を改変したものですが、著者らは図中にあるような6つのポジションで、負荷のかかり方、及び筋活動がどのように違うかを検討しました。結果は以下の通りです。

上の図が自体重を100%とした時の各ポジションの負荷、下の図はノーマルポジションを100%とした時の筋電図になります。この図を見ても「?」となる方が多いと思うので、結果を簡単にまとめてみます。

  • 自体重を100%とした時、PVポジションが一番負荷が高くなり(約70%)OKポジションが一番低くなる(約55%)。他のポジションは65%前後になる。
  • 筋活動(ここでは大胸筋と上腕三頭筋)もポジションによって大幅に異なり、ADポジションはすべての筋活動がNPよりも大きく、PVに関しては大胸筋がメインに活動し、OKポジションはすべての筋活動がNPよりも劣る。

この結果から「腕を置く位置を考慮することは対象とする筋群・負荷設定を考える際に有効だ」ということが言えると思います。

脚・腕を置く位置(高さ編)

Ebbenら(2011)は、脚・腕をボックスに置くと、自体重に対してどのような負荷変化が起きるのかを検討しました。結果は以下の通りです。

  • 脚を60cmのボックスに置く:体重の約75%
  • 脚を30cmのボックスに置く:体重の約70%
  • ノーマル:体重の約65%
  • 腕を30cmのボックスに置く:体重の約55%
  • 膝を立てる:体重の50%
  • 腕を60cmのボックスに置く:体重の約40%

以上の結果から「脚を置く高さは30cmも60cmもあまり大差がないが、腕を置く場合は大きな差が出る」ということがわかりました。

よって「ノーマルポジションの腕立てができたら次はボックスに脚を置こう」のように、負荷の漸進法を決めてもいいかもしれません。逆に、ノーマルポジションでの腕立てができない場合に、腕をボックスに置くことによって負荷を下げる、という方法をとってもいいかもしれません。

まとめ

競技アスリートにとって腕立て伏せは傷害予防の観点からみても素晴らしいエクササイズになり得ます。腕や脚を置く位置によって負荷、筋活動が異なるので、それに応じて「どのような腕立て伏せをするか?」というのを考えてもいいかもしれませんね。

参考文献

  • Gouvali MK, Boudolos K. Dynamic and electromyographical analysis in variants of push-up exercise. J Strength Cond Res. 2005;19(1):146-51.
  • Ebben WP, Wurm B, Vanderzanden TL, et al. Kinetic analysis of several variations of push-ups. J Strength Cond Res. 2011;25(10):2891-4.