以前に心肺機能を向上させる方法として、オフ・フィート・トレーニングをご紹介しました。
今回もその続編として、現場で行っている有酸素能力を向上させるトレーニングをご紹介します。
有酸素能力
有酸素能力とは有酸素エネルギーを用いて行う運動の持続能力で、一定時間内に摂取できる酸素量とその利用能力です。
マラソンなどの持久系競技にとってはパフォーマンスを決定づける大事な能力でもありますし、球技において必要な間欠的持久力を向上させる上でも重要な能力です。
有酸素能力が高まることによって、試合や練習でバテずに高いパフォーマンスを発揮できることにも繋がります。
有酸素能力を表す生理学的な指標としてVO2max(最大酸素摂取量)が用いられています。
VO2maxは換気能力、心拍出能力、筋の毛細血管網の発達、筋での酸化能力などの要素を総合した能力です。
そのため有酸素能力を向上させるためには、心拍出能力を高めて筋への酸素供給を増やし、筋の毛細血管密度や酸化能力を高める必要があります。
今回は心拍出能力についてお話していきます。
トレーニング
・1kmタイムアタック
ワットバイクという自転車エルゴメーターを用いたトレーニングで、1kmをできるだけ早い時間で終わらせます。
設定タイムは65~75秒です。レストは90~120秒、もしくは心拍数が120〜130程度まで落ち着いたらスタートします。これを10本行います。
・40分ペダル
ワットバイクという自転車エルゴメーターを用いたトレーニングで、40分間自転車エルゴメーターを漕ぎ続けます。ターゲットに設定する距離は25~28km。
このメニューは技術練習がないオフシーズンや怪我をしているリハビリの期間に実施することが多いです。
トレーニングに対する心臓の適応
紹介したトレーニングはどちらも有酸素能力を高めるトレーニングですが、それぞれの負荷に対して心臓の適応に違いがあります。
1kmタイムアタックや前回ご紹介したオフ・フィートはHIIT(高強度インターバルトレーニング)と呼ばれるトレーニングです。代表的なトレーニングにタバタプロトコルがあります。
HIITの特徴として、比較的短時間で有酸素能力と無酸素能力を向上させることができます。
心臓はHIITのような高強度なトレーニングでは、求心性肥大と言われる適応を起こします。求心性肥大では心臓の壁が厚くなります。
求心性肥大の特徴は高い心拍数において1拍ごとの心臓の収縮力が向上します。その結果、心拍数が高い状態でも心臓が多くの血液を送り出して筋へ酸素を届けることができるので、高い心拍数でも長い時間動くことができるようになります。
これに対して40分ペダルは低・中強度で長時間のトレーニングです。
代表的なトレーニングにボクサーが行うロードワーク(LSD)があります。
LSDに代表されるような低・中強度で長時間行うトレーニングでは遠心性肥大と言われる適応を起こします。マラソン選手など持久系競技の選手の心臓に見られる適応です。
求心性肥大では心臓の壁が厚くなるのに対して、遠心性肥大は心臓の容積が大きくなります。
心臓の容積が大きくなることにより、1回の拍動でより多くの血液を送り出すことができるので心拍出量が向上します。
遠心性の肥大の特徴として運動中も低い心拍数を維持できることによって、長時間動き続けられるようになります。
まとめ
このようにトレーニング方法が違えば、体が起こす適応も変わってきます。
最終的には競技特性、トレーニング時間、自分(クライアント)の特性などを加味して、各トレーニングを使い分けることが重要です。
両方のトレーニングをうまく取り入れることで、有酸素能力をより効果的に向上させることができるので、ぜひ参考にしてください。